「診療放射線技師」って、どんな仕事? 医師をサポートするやりがいを聞いてみた!

テレビドラマで注目を集めている診療放射線技師は、医療現場における放射線の専門家。

レントゲンやCT、MRI、マンモグラフィーといった放射線や超音波などを使って画像を撮影するのが主な仕事。

放射線は適切に扱わないと被ばくする危険があるため、人体に放射線を照射できるのは、医師と歯科医師以外は診療放射線技師だけで、国家資格が必要。

では、診療放射線技師とはどんな仕事なのか、どうやって診療放射線技師になるのか、実際に働いている人に、診療放射線技師のやりがいとともに聞いてみた。

***今回お話をうかがった人***


尾薗尚美さん
城西放射線技術専門学校卒業と同時に、診療放射線技師の国家試験に合格して、社会医療法人 河北医療財団 河北総合病院に就職。9年めの現在は、画像診断部の中堅技師として活躍中。

目に見えない放射線が治療に役立つことに興味をもった

尾薗尚美さんが診療放射線技師になろうと思ったきっかけは?

「小さいころから、よく父親が入院していたので、看護師を間近で見る機会が多く、「かっこいいな」とあこがれて、自分も将来は看護師になろうと考えていました。

高校は普通科に入学しましたが、高校2年生で進路選択をするにあたって、本当に看護師を目指すべきか、迷ってしまったんです。

ダンスをやっていたので、「ダンサーもいいな」と、医療とは全然違う道も考えて悩んでいました。

そんな時、姉に勧められたのが、高校生を対象とした大学・公的研究機関・民間企業の研究所などの科学技術体験合宿プログラム『サイエンスキャンプ』(現在は実施されていません)。

 

当時、医療系で募集していたのは、千葉県にある放射線医学総合研究所だけで、放射線のことはよく知らなかったのですが、研究所内の病院が見学できるプログラムもあったので、医療に携わる人を幅広く見られるかな、と思って応募してみました。

 

高校2年生の夏休み、2泊3日のサイエンスキャンプで、放射線について学び、放射線は目に見えないものなのに、病気やケガの治療に使われたり、写真を撮って体内を見ることができたりと、いろいろな活用法を知り、すごく興味をもったんです。

このサイエンスキャンプがきっかけとなり、診療放射線技師を目指そう、と高校2年生の秋に決心しました。」

病院で経験を積みながら診療放射線技師の専門学校に通った

診療放射線技師の国家試験を受験するには、4年制大学・3年制以上の短期大学または専門学校を卒業することが必要。

尾薗さんの場合は、夜間課程で4年制の城西放射線技術専門学校に入学した。

その進学先を選んだのはなぜ?

「夜間の専門学校なら、昼間に仕事をすることができますが、専門学校が医療系のアルバイト先を紹介してくれるのが魅力でした。

病院の診療放射線技師の仕事の手伝いや看護師の補助など、現場経験を積むことができるし、診療放射線技師の国家試験の勉強にも生かせると思ったので、迷わず夜間の専門学校を選びました。」

専門学校在学中は、どんなアルバイトをしていたの?

放射線技師ってどんな仕事?※撮影された画像はパソコンでチェックする

「1年次は、大学病院で外来の看護助手。ベッドを直したり、医師が使う器具や機材の準備をしたり、薬を運んだりしていました。

2年次は、健診クリニックで、診療放射線技師の補助。胸部のレントゲン撮影の位置を合わせるところまでなら無資格でもやらせてもらえるので、お手伝いすることもありました。診療放射線技師の仕事を間近で見られて、すごく勉強になりましたね。

3年次以降の2年間は、レントゲン・CT・MRIを装備しているクリニックで、同じように診療放射線技師の仕事の補助。

専門学校の授業とかなりリンクしていたので、学んだことの復習だったり、予習になったり、毎日、現場実習へ行っているみたいで、すごく楽しかったし、学生時代のアルバイトの経験が、今でもすごく役立っています。

もちろん、専門学校のカリキュラムでも現場実習があり、3年次と4年次に4週間ずつ大学病院と総合病院で実習。偶然でしたが、3年次にお世話になった大学病院は、1年次のアルバイト先だったので、ある程度、病院のことを知っていて、落ち着いて学ぶことができましたね。」

診療放射線技師として幅広い知識を身につけたくて総合病院に就職

放射線技師の仕事ってどんな仕事?※上司の診療放射線技師に画像をチェックしてもらうことも

専門学校卒業後、河北総合病院に就職した尾薗さん。

どうやって就職先を選んだの?

「私の場合は、専門学校の推薦枠を利用して就職しました。 診療放射線技師の就職先は、国公立病院、大学病院、総合病院、健診機関、クリニック、保健所、医療機器の研究・開発を行う企業など、いろいろありますが、私はやりたいことがありすぎて専門分野をしぼりきれなかったし、幅広く経験を積みたいと思ったので、総合病院か大学病院を志望。

私は、患者さんと接するのが好き。高齢だったり、身体が不自由な患者さんに、どれだけベストの接遇ができるかを考えるのが好きなので、健診機関や研究機関ではなく臨床の現場で働きたいと考えていました。

レントゲン、CT、MRI、マンモグラフィーなど、さまざまな撮影をしたかったから、すべての設備が整っていて、救急診療や健診クリニックもある河北総合病院なら、自分がやりたいと考えている幅広い分野の経験が積めると思ったんです。」

現在は、診療放射線技師として、どんな仕事をしているの?

「診療放射線技師として、入院患者さんや外来患者さんのレントゲン撮影とポータブル撮影(患者の病室へ出向いてレントゲン撮影をする)、骨密度検査、CTのほか、健診クリニックでマンモグラフィー、バリウム検査、CT、MRIなどをまかされています。

診療放射線技師は、撮影までが仕事。病気やケガを診断するのは医師の仕事ですが、時には診断補助という形で、写真を見て気づいたことを医師に進言することもあります。

自分が進言したことで、医師が病気や骨折などに気づいてくれると、うれしいですね。」

医師の診断や治療に貢献できたときが一番のやりがい

放射線技師になるには※患者さんの様子を見ながら最適な撮影をする

診療放射線技師として、やりがいを感じるのは、どんな時?

「自分が撮影した写真で、医師に病気やケガをみつけてもらえるのが一番のやりがい。

一般的な写真と一緒で、レントゲンなども診療放射線技師の力量の差がわかります。撮影する部位、撮り方など、技術差が影響するから、しっかり写せるよう、角度をはじめ、いろいろなことを考えなくてはならないんです。

患者さんは元気な方ばかりではなく、立てない方、痛みがあって体勢をキープできない方もいらっしゃるので、患者さんができる精いっぱいの状態で一番良い写真を撮ることが大事。

自分で考え抜き、工夫して、撮影した結果、撮りたかったものが写真に写っていると達成感があります。

それを基に医師が病気やケガの診断をしたり、治療方針を決めるから、診察や治療に貢献できたときに大きなやりがいを感じますね。

医師から「よく撮れてたよ」と言われると、素直にうれしいです。」

放射線技師に必要な資格とは※瞬時に判断できる能力も診療放射線技師には必要

診療放射線技師の仕事で、大変だと思うことは?

「医師から「この角度で、この部位の写真を撮って」と指示された内容で撮影をしますが、ほかにも撮ったほうがいい写真があると思ったら、その都度、医師の許可を得なくてはなりません。

レントゲンもデジタル化が進んでいて、撮影した数秒後には写真が確認できるから、すぐに見て、気づいたことがあれば、その場で医師に確認して、場合によっては追加撮影の許可を得る。

臨機応変に、これは必要な撮影なのか、その場で判断できないといけないので、スピードも求められる。けっこう頭をつかっているんですよ。」

診療放射線技師の仕事をしていて、つらいことはなかった?

「小さな子どもの撮影は、ちょっとつらいですね。

怖がって泣いてしまう子を、うまくなだめられることもありますが、難しいときは、心を鬼にして、身体を押さえつけて撮影しなくてはならない。動くと撮り直しになってしまい、余計に負担がかかりますから。

診療放射線技師は、実は体力勝負。例えば、ポータブル撮影の時、自分も放射線を浴びないよう防護しなくてはならないので、3kgくらいの鉛のエプロンを着けます。

その状態で、重い機械を押して、患者さんの身体を片手で持ち上げなから、1枚2kg近いフィルムを片手で入れ替える。意外と力が必要だから、スポーツクラブで筋トレをしている先輩もいますよ。

現在勤務している河北総合病院では、診療放射線技師の男女比は約6割が男性です。

少し力がいる仕事だからといって男性が有利というわけではなく、乳がんを診断するマンモグラフィーなど女性ならではの仕事もあります。」

医師でなくても患者さんを救うことができる大切な仕事

放射線技師になるには国家資格が必要※このエプロンには鉛がはいっていて3kgもの重さになる

診療放射線技師として、今後どんな仕事をしたい?

「マンモグラフィーやAi診断などの認定を取りたいですね。CTやMRIなども、各学会が主催する試験を受けて合格すると、技師として認定されます。認定がなくても、国家資格さえあれば診療放射線技師の仕事はできますが、自分自身のスキルの証明になるし、患者さんにも安心していただけるので、勉強を続けていきたいです。

今は、死亡究明のためにご遺体を撮影するAiに興味があります。」

診療放射線技師を目指す高校生にアドバイスするとしたら?

「診療放射線技師は、病院の中で縁の下の力持ち的な存在。

認知度は低いけれど、レントゲンやCTなどを撮影しないと、病気やケガの診断ができないし、診療放射線技師の腕次第で病気や骨折がみつけられたり、治療方針が決まる重要な仕事です。

医師でなくても患者さんを救うことができるから、命を預かっているという大きなやりがいがあります。

人の役に立つ仕事をしたいという人には向いていると思います。

放射線というと難しいイメージがあるかもしれないけれど、大学や専門学校などでしっかり勉強すれば、国家資格は取得できる。

男女問わず、医療に携わって、人のためになる仕事をしたいと考えている人は、診療放射線技師を目指してみよう!

診療放射線技師になるには

診療放射線技師になるには、国家資格を取得することが必須。まず3年制か4年制の養成校(大学・短大・専門学校)で学び、国家試験の受験資格を得てから、年1回、例年2月に実施される診療放射線技師国家試験に合格すると、国家資格を取得できる。

平成31年度の合格率は79.2%(新卒者の合格率は89.4%)

※この記事は2019年5月に取材した記事になります。

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